ミケ
「大きい庭が欲しいんです。」
その一言からこのプロジェクトはスタートしました。
クライアントはこの庭の一部を畑として、野菜や果物を作りたいと思っていました。生活の中で家族と一緒に野菜を育てそれを食することは、今の現代社会にとって、とても有意義なことだと感じています。そのような生活を応援出来る住宅を考える必要があると考えました。畑には太陽の光が燦々と満ちるようにと敷地の南面に庭を配置することが第一条件と定義しました。そしてこの大きな庭と住宅が呼応するような関係がこの住宅の適しているカタチと考えます。
日常生活の中に、庭や空が感じられる自然を育む住まいです。
まず、この住宅はリビングアクセスプランで構成されています。家族は、このLDKを通ることで2階の個室にアクセスします。顔を合わせる機会をつくることで家族を感じることを意識させます。住宅の内部から庭を感じとれるようにLDK、子供部屋、ルーバー越しに浴室をレイアウトしています。
またLDKには、大開口のサッシとデッキを設け大きな庭と連続した空間を考慮しています。2階の子供部屋はクライアントの要望もあり最小限の空間としています。子供が個室に籠らずLDKに集まることを期待した計画です。しかし、勾配天井にすることでロフトを持つ開放感のあるこども室になっています。将来には、間仕切壁をつくることで二つの部屋に分けることが可能です。階段にも大きなフィックス窓を設けており、昇り降りするときに、昼には青空が夜には星空が視界に広がります。日常の何気ない動作の中に自然を感じとるスペースとして機能します。建物の黒壁には庭に向かって袖壁を設けることで内部空間から大きな庭へ視線が自然に向けられます。庭を生活の中に取り込むことが出来ます。庭の中で野菜を育てるという行為が、住宅の中では自然を感じるという行為へ変換させられる住宅です。こども達に自然が生み出す力の美を感じてもらえれば…と思います。